美大生や美大を目指す受験生なら知っておきたい、美大の就職事情。就職先や就活の進め方、大学や学部・学科による違いなど、ポイントを押さえておくとよりスムーズに就活を進めることができます。でもいざ調べてみると、美大からの就職は、学んできたことに直結する仕事が見つけられなかったり、「才能がある一部の人しか好きな仕事に就けない」「美術に関係のない会社に就職する人も多い」などネガティブな話があったり。就職活動のスタート地点でつまずいてしまう人も多いんです。
そこでこの記事では、美大の就職について、わかりやすく実情をまとめました。私も芸術・デザイン系の学部出身で就活をした身ですので、その経験も含めてお話していきますよ。まずは美大の就活生に向けての話からスタートしていきましょう。
Contents
- 1 美大の就職先一覧。広告・デザイン系から一般企業まで
- 1.1 美大の就職先(1) 広告代理店
- 1.2 美大の就職先(2) デザイン業界:デザイン事務所からメーカーまで様々
- 1.3 美大の就職先(3) 建築業界:建築設計事務所・ハウスメーカー・インテリア系会社など
- 1.4 美大の就職先(4) ゲーム業界:任天堂・バンダイナムコなどゲーム制作会社
- 1.5 美大の就職先(5) 映像・放送・演劇業界:テレビ局・映画・舞台制作会社など
- 1.6 美大の就職先(6) 出版業界:集英社、講談社、美術出版社など
- 1.7 美大の就職先(7) 写真業界:デザイン事務所・出版社・撮影スタジオなど
- 1.8 美大の就職先(8) テキスタイル業界:アパレルや家具メーカーなど
- 1.9 美大の就職先(9) 工芸・陶芸関係:工房やメーカー、作家など
- 1.10 美大の就職先(10) 絵画関係:美術館学芸員やギャラリー・画廊など
- 1.11 美大の就職先(11) 教育・研究関連:学校・大学・美術館など
- 2 美大・芸大生向け就職サイトおすすめ5選
- 3 美大生の就職活動方法。志望動機やポートフォリオ制作、活動時期など
- 4 美大卒だと就職できない?厳しい業界もあるが、結局は個人の能力や相性による
- 5 美大は学部で就職すべき?大学院進学のメリット・デメリット
- 6 美大中退・留年・既卒者の就活事情。誠実に企業と向き合うことが大切
- 7 美大就職の実態。平均年収やコネ入社の有無は?
- 8 これから美大・芸大を目指したい!受験生・社会人向け就職情報
- 9 最後に
- 10 番外編:美大生で茨城県で就職活動をしている方へ
美大の就職先一覧。広告・デザイン系から一般企業まで
まずは、美大からの就職を考えるにあたって、主な就職先を見ていきましょう。代表的な就職先は、以下の11種類。大学で学んだことをダイレクトに生かすクリエイティブ系の職種に就く人もいれば、学んだことを武器として総合職などで活躍する人もいます。専攻によって、目指す業界もある程度絞られてきますので、自分の専攻と照らし合わせながら見てみてください。
美大の就職先(1) 広告代理店
美大のデザイン系学部に人気なのが、広告代理店。広告代理店とは、クライアントの要望に沿って、広告の企画から制作までを手がける会社のことです。クライアントとメディア媒体、時には外部の制作会社などを巻き込んで広告をプロデュースします。そのため、論理的思考力や企画力、デザインセンス、コニュニケーション力など幅広い能力が求められます。自分の作りたいものではなくクライアントに応じた企画や制作ができる人、誰かに褒められるものを作りたい、一つのものを作り続けるのは飽きてしまう、という人にぴったりな仕事です。
さて、広告代理店には総合広告会社と専門広告会社、ハウスエージェンシーの3種類があります。それぞれの特徴を簡単に押さえておきましょう。
総合広告会社:電通や博報堂など
総合広告会社は、あらゆる媒体を使った広告の企画から制作までを担う会社のこと。クライアントが希望するものであれば、CM、ポスター、プロダクト、アプリ、サービス、イベント、建築に至るまでなんでも作ることができます。クリエイティブ系職種は、デザイナーやコピーライター、プランナーなど。いずれはアートディレクター、クリエイティブディレクターを目指すか、フリーとして独立する人も多いです。
広告代理店というと、多忙で寝る暇もないなど、ネガティブなイメージがある人もいるかと思います。ただ、大手代理店のクリエイティブ職に勤めている人に聞いてみたところ、その職場が合うかどうかは人それぞれで、その人自身は毎日が新しいものづくりの連続で楽しくて仕方ないとのこと。クライアントからの急な依頼や修正が入ったり、締め切りギリギリまで完成度にこだわる人であれば、多忙になることもありますが、基本的に忙しさは個人の裁量によるところが大きいそうです。特に大手広告代理店では、最近は労働時間や業務の進捗状況のチェックが厳しくなっていて、膨大な残業はできない仕組みになっています。
大手企業例
- 電通
- 博報堂
- アサツーディ・ケイ
- 大広 など
専門広告会社:サイバーエージェントやオプトなど
専門広告会社は、インターネット広告専門、新聞広告専門、屋外広告専門など、特定の媒体専門の広告会社のこと。1つのメディアを専門に取り扱うため、できることは限られますが、その分特定メディアの広告におけるスペシャリスト的な存在です。
近年は、特にインターネット広告専門の会社が拡大しています。私たちの生活の中でも、リスティング広告や動画広告、SNS広告など目にしない日はありませんよね。インターネット専門広告会社は、そういったインターネット広告について、クライアントの意向に沿って、広告の企画や運用、分析、改善までを行います。
インターネット広告におけるクリエイティブ職は、プランナーやデザイナー、クリエイティブディレクターなどがあります。ただ、広告の制作自体は外部の制作会社に依頼することも多いです。
大手企業例
- サイバーエージェント
- オプト
- セプテーニ など
ハウスエージェンシー:東急エージェンシーやジェイアール東日本企画など
ハウスエージェンシーは、特定の企業や企業グループを専門に担当する広告会社。基本的には、その企業の関連会社である場合が多いです。先にご紹介した2つの広告代理店よりも、目新しい案件は少ないですが、企業が属する分野の広告に精通して企画や制作を行うことができます。広告媒体としては、総合広告代理店と同じく、あらゆるメディアを用いた広告プロモーションを行います。
大手企業例
- 東急エージェンシー
- ジェイアール東日本企画
- ジェイアール東海エージェンシー など
美大の就職先(2) デザイン業界:デザイン事務所からメーカーまで様々
広告代理店と並んで、デザイン系の美大生に人気なのが、デザイン事務所やメーカーのデザイナー職。グラフィックやプロダクト、インテリア、WEB、アパレル、イベントなど、企業によって様々なデザイン業務(企画・設計・デザイン製作など)を手がけます。広告業界と同様に、デザイナーはアーティストではなく、問題に対して解決策となる企画を提案する職業なので、発想力や造形力だけでなく、論的思考力が必要とされます。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
デザイン事務所:DRAFT、GKデザインなど
デザイン事務所は、クライアントからの依頼を受けて、デザイン業務を行う企業のこと。事務所によって受注する仕事は様々で、グラフィックやWEBなど特定の分野を得意とするデザイン事務所もあれば、グラフィックからインテリアまで横断的にデザイン業務を手がける事務所もありますよ。
平成29年特定サービス産業実態調査速報によると、デザイン事務所は日本に約7500の事業所があり、平均従業員数は約4人です。かなり小規模の事務所が多く、大きな事務所でも30名ほどのところがほとんど。ギリギリの人数で多忙な業務を回している事務所もあり、いわゆるブラック企業が埋もれているのも事実です。デザイナーは人気の職業なだけに、やりがいと引き換えに最低賃金並みの給与で激務を強いる事務所もあるので、面接などで企業を訪問する際はよく実情をチェックしておきたいところです。
とは言いながら、デザイン事務所もデザインが好きな人にとっては、次々と新たな案件に挑戦できるやりがいのある職場。こだわりの強い人であれば、自ら最大限の時間を使って完成度にこだわる人もいます。仕事内容と働き方、自分が納得のいくバランスにできることが理想的です。
大手デザイン事務所例
- DRAFT
- GKデザイン
- HARA DESIGN INSTITUTE
- KASHIWA SATO
- TSDO など
メーカーのインハウスデザイナー:資生堂、ソニーなど
企業に属するインハウスデザイナーは、企業の商品や広告などにおいて、あらゆるデザイン業務を担います。様々なクライアントを持つデザイン事務所に対して、インハウスデザイナーは自分が属する企業のみを担当するため、商材の分野は専門的と言えます。
企業内のインハウスデザイナーの人数が少ない場合、WEBや印刷物、プロダクトなど幅広いデザイン業務を一人で担当することもあります。幅広い分野についてデザインの知識や技術が必要なため、自分の時間を使って勉強したり、展示会に足を運んだりして知見を広げる人が多いです。
インハウスデザイナーは、いわゆるホワイトな大企業に属する場合も多く、デザイン事務所と比べると給与や休日、福利厚生などの待遇は良好です。また、企業によっては、多くの人の目に触れるような大きな仕事を担当するチャンスもあり、作り手としてのやりがいも大きいと言えます。
インハウスデザイナーのデメリットとしては、企業によってはデザイン部の立場が弱かったり、企業内のしがらみがあったりすること。デザイン業務よりも他部署への根回しなど、良好な関係づくりに時間を割かなければ提案が通らないこともあります。ものづくりは技術職や企画職など、他部署の人と協力しながら取り組むため、コニュニケーション力や調整力が必要とされます。
大手企業例
- 資生堂
- ソニー
- パナソニック
- トヨタ
- サントリー など
美大の就職先(3) 建築業界:建築設計事務所・ハウスメーカー・インテリア系会社など
美大の建築学科卒業生の就職先としては、建築設計事務所やゼネコン、ハウスメーカー、ディベロッパーなどが多いです。建築の場合、住宅や商業施設、文化施設、公共施設、ビル、公園、街路、都市計画まで、携わる分野は幅広く、企業によって得意とするものはそれぞれです。また、設計一つとっても構造設計や設備設計、意匠設計など多様な業務があり、美大の建築学科の場合は、いわゆる建築のデザインを決める意匠設計を目指す人が多いです。
建築学科の美大生でも、建築よりもインテリアや家具に興味がある場合は、インテリアデザイン会社やディスプレイ会社、家具メーカー・工房などに勤める人も多いです。基本的には内装や家具の企画、デザイン、設計などを手がける人が多いですが、実際に制作まで密に携わりたいという人だと、家具工房などを目指す人もいます。また、古い家具が好きな場合は、アンティーク家具のリペア職人になって家具の修復を専門に手がける人もいますよ。建築学科といっても、設計だけでなく幅広い職種への道があります。
大手企業例
- 建築設計事務所:日建設計、三菱地所設計、安藤忠雄建築研究所、隈研吾建築都市設計事務所など
- ゼネコン・建設会社:大林組、大成建設、清水建設、鹿島建設など
- ハウスメーカー:積水ハウス、ダイワハウス、住友林業、ミサワホームなど
- ディベロッパー(不動産・開発業者):三井不動産、三菱地所、住友不動産、森ビルなど
- 家具・インテリアメーカー:良品計画、コクヨ、飛騨産業、柏木工など
- ディスプレイ会社:乃村工藝社、丹青社、スペース、エイムクリエイツなど
美大の就職先(4) ゲーム業界:任天堂・バンダイナムコなどゲーム制作会社
イラストやゲーム、CG制作が好きな美大生の就職先として人気なのが、ゲーム制作会社。ゲーム制作会社には、基本的にプランナー、デザイナー、プログラマーがいて、その中でもデザイナーと言われる人がCGを駆使してキャラクターや背景、コンセプトアート、ユーザーインターフェースなどビジュアル面の制作を行います。美大出身だと、デッサン力や表現力を武器にゲーム会社へ就職する人が多いです。
ゲーム業界におけるデザイナーは、会社によっては企画やシステム構築などより広い分野にまたがって業務を担当する場合もあります。また、プログラマーとチームを組んで制作する場合も多く、プログラミングの知識を身につけていると有利な職種です。ただ、ゲーム業界も会社によっては多忙を極めるため、やりがいを重視して働きたい人向きです。ゲームが大好きで、チームでの制作が得意な人でないと続けていけません。
大手企業例
- ソニー
- 任天堂
- バンダイナムコホールディングス など
美大の就職先(5) 映像・放送・演劇業界:テレビ局・映画・舞台制作会社など
美大生の中でも、映像や放送、演劇などの美術を作りたいという人は、テレビや映画、舞台制作会社の美術スタッフを目指す人が多いです。美術スタッフは、監督やプロデューサーが持つ作品のイメージを形にする仕事。小道具から衣装、大道具まであらゆる美術の制作・準備をします。テレビの場合は、ドラマの一室やスタジオの撮影セットを作ったり、大規模な映画では街全体を作るなんてことも。作品の世界観を聞き出して表現する力、イメージ通りのものを作る造形力が必要とされます。
映像・放送業界は、華やかで憧れる業界ではありますが、大変多忙で生活が不規則になるのが一般的です。強い気持ちと体力がないと続かない、入れ替わりの激しい世界と言われています。
大手企業例
- テレビ朝日
- 日本テレビアート
- フジテレビアート
- 東方映像美術
- グレイ美術
- 劇団四季 など
美大の就職先(6) 出版業界:集英社、講談社、美術出版社など
雑誌や書籍などの企画から制作、発刊、宣伝広報などを担う出版社の仕事。美大からは編集者やデザイナーとして就職する人が多いです。編集者の仕事は、企画の立案にはじまり、企画に沿ったライターやイラストレーター、カメラマン、デザイナーなどの手配、取材の手配、編集、校正、印刷、製本、広報まで幅広い業務に関わります。様々な業種の人と意思疎通を図って1つのものを作り上げる、ディレクター的な存在です。場合によっては編集者がライターを兼ねていたり、社内にデザイナーを抱えていたり、いろんなパターンがあります。
美大生に特に人気なのは、美術手帖などのアート系雑誌を手がける美術出版社。美術を題材にした雑誌や書籍を専門に発刊しているため、まさに好きな分野の知識を深めつつ、クリエイティブに活躍できる仕事です。
大手企業例
- 集英社
- 講談社
- 小学館
- 美術出版社 など
美大の就職先(7) 写真業界:デザイン事務所・出版社・撮影スタジオなど
美大で写真を学んだ人の就職口としては、デザイン事務所やオンラインショップ、新聞社、出版社、撮影スタジオなどのカメラマンがあります。撮影する対象はそれぞれで、雑誌やWEB、ポスター、カタログなどに掲載する広告用写真を主に手がける商業カメラマンや、事件やニュースなどを撮影する報道カメラマン、ブライダルを撮影するウェディングカメラマン、成人式や家族写真を撮影するスタジオカメラマン、学校行事、卒業アルバム用の写真などを撮影するカメラマンもいます。カメラマンは他の職種と比べて求人が少ない方ですが、近年はオンラインショップなどの商品撮影を行う企業内カメラマンの求人が増えています。
アシスタントカメラマンとして就職する場合、スタジオの掃除や機材の搬出入、設置、撮影補助、アポイント調整など師匠となるカメラマンについて雑用全般をこなさなければなりません。企業にもよりますが、基本的には上下関係が厳しい業界。体力や精神的なタフさが必要とされます。ただ、将来フリーカメラマンとして活躍するには、このアシスタント業務を通して技術や人脈を得るのが一般的です。
一方オンラインショップのカメラマンのように撮影量の多い企業では、入社後アシスタントとしてではなく、撮影やライティング、画像編集などを実践的にレクチャーされて、早々に戦力となる場合が多いです。この場合は、撮影する対象は企業によって限定されますが、専門的にその分野の技術を磨くことができます。どんなカメラマンになりたいかによって目指す就職先が変わってきます。
美大の就職先(8) テキスタイル業界:アパレルや家具メーカーなど
美大でテキスタイルを専攻した人の就職先としては、アパレルメーカーや家具メーカー、デザイン事務所などが多いです。テキスタイルデザイナーとして、テキスタイルの企画から制作までを手掛けます。制作の段階では、工場にサンプルを発注したり、細かな調整をしたりして、イメージ通りの生地に仕上がるよう調整を行い、見本となる商品を作ります。家具やアパレルメーカーの場合は、それを自社商品に使いますが、繊維メーカーなど布自体を商材としている場合は、見本市などでメーカーに向けてプレゼンや展示をして営業活動を行います。
テキスタイルを作るにあたっては、デザインセンスだけではなく、トレンドを読み取る力や企画力が求められます。また、素材や加工法、染色方法など、身につけばければならない専門知識が多い仕事です。
美大の就職先(9) 工芸・陶芸関係:工房やメーカー、作家など
美大の工芸科卒の方に人気なのが、陶磁器や漆器、ガラス、木工、ファブリックなどの工房や工芸品メーカーといった就職先。職人やデザイナーとして企画・デザイン・制作に取り組みます。純粋に手を使ったものづくりに取り組みたい場合は、工房に就職したり、フリーの作家として制作活動をする人が多いです。給与や休日などの待遇よりも、より良い作品を作ること、工芸を極めたいという人という職人気質の人に向いています。
工芸関係の工房は、小さな規模のところが多く、定期的な求人募集はしていないところがほとんど。気になる工房を見つけたら、たとえ人を募集しているかわからない場合でも、まずは直接問い合わせてみましょう。大々的な募集はしていなくても、いい人がいれば採用するというところもありますよ。
美大の就職先(10) 絵画関係:美術館学芸員やギャラリー・画廊など
美術館やギャラリーが好きな美大生なら一度は考える、美術館学芸員の仕事。美術品の調査や研究、保管、展示などの業務が主な仕事です。特別展の企画や実施、運営などにも携わることができ、美術に深く関わりながら、その魅力を人々へ広く伝えるために尽力します。
学芸員は憧れを持たれやすい人気の仕事ですが、実際は雑務や力仕事などが多いのも事実。美術館によっては、雑務に追われて調査や研究などに時間を割けないこともあるんだそう。展示会など華やかな部分もありつつ、美術館運営において必要となる地味な仕事にも進んで取り組めるオールラウンダーが求められます。
美大の就職先(11) 教育・研究関連:学校・大学・美術館など
美大出身で美術や芸術の教育や研究に携わりたいと思ったら、大きくは学校の教員になる道と、美術館や博物館などで学芸員になる道があります。教員の場合、中学や高校、専門学校、予備校、大学、美術スクールなどがありますよ。中学、高校の場合は、教員免許が必須、専門学校や予備校、大学などでは相応の経験や実績が求められます。
美術教師の仕事は、日本全国にあるため、地方でも就職口があるのがうれしいですよね。ただ、その分人気も高く、採用試験は狭き門です。正規職員を目指していても、非常勤講師としてしか働けなかったり、正規職員として雇用されるまで画材店スタッフや美術教室のアシスタントなどで社会人経験を積む人もいます。一度で合格できなくても、モチベーションを保って粘り強く挑戦することが大切です。
美術・芸術関係の仕事については、「美術・芸術関係の求人を探すなら必見!職種一覧と理想の仕事の探し方」の記事でも詳しくご紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。
美大・芸大生向け就職サイトおすすめ5選
美大からの主な就職先について押さえたところで、次は美大・芸大生におすすめな就職サイトをご紹介します。クリエイティブ系専門の求人サイトですので、先ほどご紹介したような職種の求人が中心です。サイトによって出会える企業はそれぞれですので、すべて満遍なくチェックするのがおすすめですよ。それでは早速見ていきましょう。
全国の美大芸大生のための就活サイト「美大芸大就活ナビ」
美大芸大就活ナビは、新卒美大・芸大生向けのクリエイティブ系求人サイト。東京を中心とした中小企業が多く、グラフィックやWEBデザイナーの募集が多く掲載されています。求人情報に限らず、会社説明会やセミナーなどのイベント情報もまとめられていますよ。登録している人の約97%が美大・芸大生のため、美術系学生を採用したい企業が多く利用しています。
>「美大芸大就活ナビ」のページはこちら
クリエイティブ業界の就職情報サイト「CINRA.JOB」
CINRA.JOBもクリエイティブ系の求人に強い新卒・中途向け就職情報サイト。こちらも東京が中心ですが、グラフィックやWEBデザイナーなどの募集が多く掲載されています。募集ページは、企業の制作実績やオフォス風景などビジュアルが多く掲載されていて、仕事の雰囲気が掴みやすいのが特徴。また、企業へのインタビュー記事やコラムが充実していて、クリエイティブ業界の人々の働き方や考えについて知ることができます。
>「CINRA.JOB」のページはこちら
マスコミ・コンテンツ業界に特化した就職情報サイト「クリ博ナビ」
クリ博ナビは、ゲーム会社・広告・テレビ局・音楽・マスコミ関係に強い就職サイト。新卒の就活生向けサイトだけでなく、中途・転職者向けサイトもあります。メリットとしては、テレビ局やマスコミなど大手企業の求人が多いこと、偏りはありますが、ほぼ日本全国の求人が掲載されていること、職種を細かく指定して検索できることが挙げられます。また、各業界の特徴やキャリアステップ、ワークフローなど、業界研究に役立つコンテンツも充実しているのもうれしいポイントです。
>「クリ博ナビ」のページはこちら
作品を投稿して企業と出会う「VIVIVIT(ビビビット)」
ビビビットは、学生が作品やプロフィールを登録し、企業から連絡をもらう逆指名型の就活サイト。企業からスカウトが来て、学生もその企業の選考を受けたいと思えば、サイト上のチャットルームで自由にやりとりすることができます。また、気になる企業があれば、学生側からもアプローチすることもできますよ。
ビビビットは、クリエイティブ系の就活サイトの中でも掲載社数・登録者数が多いのが特徴。マイナーな企業から大手企業まで幅広い規模の企業が利用しています。逆指名型なので、相性の良い企業と出会いやすく、自分からは知りえなかった企業が見つかる可能性もありますよ。
>「VIVIVIT」のページはこちら
学生と企業が作品でつながるオファー型就活サイト「OfferBox Creative」
OfferBox Creativeも、学生が登録した作品を見て企業からオファーが届く就活サイト。中小のベンチャー・老舗企業から大手企業まで幅広い企業が利用しています。こちらはオファー型新卒採用サービス「OfferBox」から2018年3月に派生して生まれた、クリエイティブ人材特化型のサービス。仕組みはビビビットとほぼ同じですが、登録している企業が異なるため、こちらにも登録しておくと企業との出会いのチャンスを広げることができます。
>「OfferBox Creative」のページはこちら
美大生の就職活動方法。志望動機やポートフォリオ制作、活動時期など
次は、美大生の就職活動において押さえておきたいポイントをご紹介します。志望動機を書く際の注意点、企業へのエントリーやポートフォリオ制作などのスケジュールなどをお伝えしますので、ぜひ役立ててみてください。
美大生の志望動機の作り方。業界や職種だけでなく、企業へのメッセージを込める
美大生の中には、ここで働きたい!という憧れの企業がある人もいれば、希望の職種に就ければ企業はどこでもいい、という人もいるかと思います。志望動機を考える際、前者の場合は自然と言葉が浮かんできそうですが、後者の場合は職種への情熱は伝わっても、じゃあなぜその企業でなければならないのか、という点が抜けていることが多いです。志望動機は、あくまでその企業に対する志望動機なので、企業に向けてメッセージを込めることが求められます。
そこで、必要になるのが業界研究や企業研究。こう言うと大げさに聞こえますが、希望の業界についてネットや本で調べたり、企業のホームページを見るだけでも、きっと志望動機を組み立てるヒントとなるはずですよ。例えば、その企業が業界の中でどういう立ち位置で、どんなことを得意としているのか、ものづくりに対してどんな姿勢で臨んでいるのかなど、その企業にしかない持ち味が見えてくるはず。その持ち味に対して、共感する部分や、自分ならこんな風に貢献できる、という部分をアピールしてみましょう。自分がやりたいことだけでなく、企業側の視点に立って、会ってみたいと思わせる志望動機にすることが大切です。
また、いくら考えても志望動機が浮かばない企業は、そもそも自分に合っていない可能性が大きいです。無理やり嘘で固めたりせずに、自然と志望動機が浮かぶような企業をもっと探してみましょう。
美大生の就職活動時期。ポートフォリオ制作や面接・選考会など
次は、美大生の就職活動スケジュールについて見ていきましょう。2018年度現在、日本経済団体連合会、通称経団連が取り決めている2020年度卒業予定生の就活スケジュールは以下の通りです。
- 大学3年3月(大学院1年3月) 就職説明会解禁
- 大学4年6月(大学院2年6月) 採用面接など選考解禁
現在のこのスケジュールでは、就職説明会に参加し出す3〜4月頃から、早い人では3年次の夏頃からポートフォリオ(作品集)を作り始めるという人が多いです。美大生は4年生になると、就職活動と卒業制作を並行して進めなければならないため、多くの学生がとても忙しい日々を送ります。そのため、ポートフォリオ制作は、できればまだ余裕のある3年生の頃から取りかかって、クオリティを上げておきたいところです。
ただ、上で紹介した就活スケジュールは、2021年度以降撤廃するという意向が経団連から示されています。就活生ならもう耳にしているかもしれませんね。正式決定ではありませんが、そうなると美大生は1、2年生の段階からインターンシップに参加したり、ポートフォリオ作りを始めたりと、就職を意識した活動を前倒しする人も出てくるでしょう。企業側が優秀な学生を早く確保したいという考えで、早期に採用を始めることになれば、学生側はそれに合わせて行動しなければなりません。就活が億劫な人にはネガティブなニュースかもしれませんね。
ただ、私も就活を始める前までは、就活には辛そうなイメージしかありませんでしたが、実際始めてみると学内だけでできなかった経験ができたり、講義でもより実践を意識して講義や研究などに取り組めるようになったりと、プラスの面もたくさんありました。就職活動はうまくいかないことが多いのも事実ですが、困難に早くぶつかることで、自分の行動や将来を見つめ直すきっかけになります。人によっては大変な長丁場になる可能性もありますが、根詰めすぎず、前向きに取り組んでみてくださいね。
美大卒だと就職できない?厳しい業界もあるが、結局は個人の能力や相性による
みなさんは、美大の就職は厳しいという話を聞いたことがありますか?ネットで就職について調べていると必ず出てくる話なのですが、これから就職活動を始める人にとっては、耳の痛い話かもしれませんね。
美大の就職率については、8章の「美大の就職率ランキング!就職に有利な美大はここ」で具体的にお話ししますが、確かに美大は就職率が低いというのは事実です。しかしながら美大の卒業生は、より制作や研究に注力するために大学院に進学する人や、就職せずに自営業の作家として制作に取り組む人が多く、一概に美大だから就職が難しいとは言えません。例えば、就職率が高いことで有名な武蔵野美術大学の2017年度実績を見ると、学科全体の就職率は約60%、その他作家活動をする人が約30%、進学者が約10%です。就職希望者のうち実際に就職できた人の割合は約91%と、高い実績を誇っています。
ただ、どこの美大であろうと、大手広告代理店や大手メーカーのデザイナーなど、競争率の激しい職場を目指す場合は、なかなかハードルが高いのも事実。中には、出身大学で足切りを行うところもあり、そういった企業では有名美大でない限り、書類選考やWEBエントリーなどで早々に落とされます。でもまだ落ち込むことなかれ。デザイン系の企業も一般企業も、美大出身者を求めている企業は他にもたくさんあります。ぜひ、企業の知名度や規模に捉われずに探してみてください。
また、希望の企業に就職できるかどうかは、どこの大学出身かというよりは、個人の能力や会社との相性、そして運にもよります。もし選考がうまくいかない時があっても、自分が劣っていたからだと悲観的になりすぎず、単純に相性が悪かった、縁がなかったというくらいに割り切った方がいいです。ずっと同じ業界の企業を受けていて選考に通らない場合は、違う業界でも気になる企業がないか探してみましょう。私の周りでは、業界を変えたことで、急に就活がうまくいきはじめた人もいました。固定概念に捉われすぎず、広くアンテナを張って企業と向き合ってみてくださいね。
美大は学部で就職すべき?大学院進学のメリット・デメリット
美大は、学部を卒業後、就職や作家への道を選ぶ人と、大学院へ進学する人がいます。大学院への進学は、美大に入学した時から決めていたという人もいますが、大学で学ぶうちに、もしくは就職活動を経て、大学院に行こうかどうしようかと迷う人も多いんですよね。そこでここでは、美大で大学院に進学するメリットとデメリットをご紹介しておきます。
大学院に進学するメリット
- 制作・研究活動に一層励むことができる
- 学部以上に大学院ならではの専門知識を学べる
- カリキュラムがしっかり決まっていた学部に比べ、自主的に考え行動する時間がある
- 専門分野の人脈が広がる
- 大学の設備やスペースが使える
- 大学関係の展示会に出展する機会がある
大学院に進学するデメリット
- 社会に出るのが2年間遅れる
- 自分で目標や計画を立てて管理できなければ、無駄な時間になる可能性も
- 大学内という狭い環境のため視野が広がらない
- 刺激や新たな視点が得るためには学外へ出る必要がある さらに学費がかかる
簡単にまとめると、大学院へ行くメリットは、より高度な制作や研究に取り組めること。将来作家や研究者などを目指す人にとっては、これからの方向性を固めるうえで有意義な経験になるでしょう。大学院という専門組織に属する分、展示会への参加や人脈を作る機会にも恵まれます。逆に、自主性や計画性のない人にとっては、大学院はただの学生時代の延長時間のような場になってしまいます。同世代の多くが就職する中、2年という貴重な時間と学費を使って、自己実現のために学ぶのですから、明確な目標を立てて計画的に行動したいですね。
美大中退・留年・既卒者の就活事情。誠実に企業と向き合うことが大切
美大生の中でも大学中退や大幅な浪人、留年などをしていて、ストレートの新卒学生と違う状況で就職活動をする人もいます。若い人材が欲しい企業だとマイナスのイメージを持つ場合もありますが、どういう経緯でそうなったか、それに対してどう対処しているかを明確に説明できれば、採用されるチャンスは十分にありますよ。例えば、広告代理店である東急エージェンシーには、「留年採用」という、留年したことをポジティブに捉えたユニークな採用制度があったりもします。
美大中退や既卒生の就職先としてよく耳にするのは、やはりデザインやウェブ、ゲーム関係の企業。また、美術は仕事としてではなく趣味で続けたいと思う人も多く、一般企業の事務職や営業・企画職などに就職する人も多いです。本人からしてみると大きなハンディキャップだと感じるかと思いますが、判断は企業によってそれぞれですので、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
美大就職の実態。平均年収やコネ入社の有無は?
美大の就職活動にまつわる話として、美大生の平均年収やコネ入社の有無など先輩たちの実態が気になっている人も多いかと思います。それぞれ簡単にまとめてご紹介します。
美大卒業生の平均年収。大学別に紹介
20〜40代の美大・芸大系出身者の出身大学別年収データは以下のとおりです。
平均年収(20〜40代) | 平均年収(20代) | |
東京藝術大学 | 382万円 | 238万円 |
多摩美術大学 | 414万円 | 315万円 |
武蔵野美術大学 | 406万円 | 315万円 |
東京造形大学 | 423万円 | 423万円 |
女子美術大学 | 346万円 | 292万円 |
京都工芸繊維大学 | 494万円 | 370万円 |
京都造形芸術大学 | 323万円 | 279万円 |
大阪芸術大学 | 395万円 | 299万円 |
出典:キャリアコンパス by DODA「出身大学別年収データ」
美大卒生は、作家として細々と暮らしている人もいれば、高く作品が売れる人がいたり、一般企業に就職する人がいたりと、人によって働き方が幅広く、年収も様々です。20代の平均年収は300万円に及ばない人も多いですが、好きな仕事ができれば構わないという人も多いでしょう。平均年収はあくまで参考に、自分なりの基準を持って就職先を選びたいところです。
コネ入社はある?美大の就職に有効なコネ作り
コネ入社というとあまりいいイメージはありませんが、就職活動においてコネクション作りは大切な手段。美大生だと、純粋に作品で自分を判断してほしい、という人もいるかと思いますが、絶対に入りたい企業があるならぜひ人脈作りにも力を入れてみてください。例えばよくある話だと、学生の時から気になるデザイン事務所にアルバイトとして雇ってもらい、そのまま正社員として採用してもらうという流れ。学生側としては実践的に仕事を学ぶことができ、企業側としては一から教育する手間が省け、人間性もよくわかった上で採用できるので、すんなり採用されるケースも多いです。
また、アルバイト以外でも、就職活動でOB訪問をしたり、インターンに申し込んだり、デザイン系のイベントに足を運んだりと、自ら行動してコネクションを作ることも可能です。OB訪問やインターンなどは始めるまでは緊張しますが、初めてしまえば誰でもそのうち慣れてきます。私も初めは苦手でしたが、企業側から見ると就職希望の学生が相手なので、大抵親切に仕事や会社のことについて教えてくれますよ。ぜひ、一歩を踏み出してみてくださいね。
これから美大・芸大を目指したい!受験生・社会人向け就職情報
さてここからは、美大や芸大を目指す受験生に向けて気になる就職情報をお伝えしたいと思います。大学ごとの就職率や美大の種類、就職に有利な学科などについて調べましたので、進路を検討する際の参考にしてみてください。
美大の就職率ランキング!就職に有利な美大はここ
大学受験パスナビのサイトによると、2018年現在、美術やデザイン、工芸などの芸術学部を持つ大学は109校。美大選びは、学べる内容で決める人が多いと思いますが、将来企業に就職して働きたいという人は、やはり就職率が高い大学を目指すのがおすすめです。就職よりも作家を目指す人が多い大学では、就職を意識した講義が少ない場合も多く、就職活動で苦労することが多いようです。
それでは、美大の中でも人気の10校について、就職率を見てみましょう。
就職率(%) | 進学率(%) | |
東京藝術大学 | 18.3 | 44.1 |
多摩美術大学 | 60.0 | 7.9 |
武蔵野美術大学 | 50.1 | 8.4 |
金沢美術工芸大学 | 59.5 | 20.9 |
京都市立芸術大学美術学部 | 46.6 | 26.7 |
愛知県立芸術大学美術学部 | 55.6 | 31.1 |
東京造形大学 | 54.6 | 7.3 |
女子美術大学 | 記載なし (※1) | 5.6 |
沖縄県立芸術大学美術工芸学部 | 40.3 | 22.6 |
京都工芸繊維大学 工芸科学部 | 20.3 | 73.6 |
(※1)女子美術大学HPによると就職希望者に対する就職者率は89.2%
出典:大学受験パスナビ(2017年3月卒業者情報)
美大の就職率は、多摩美術大学、金沢美術工芸大学など高いところで約60%。進学を除く残りの20〜30%の卒業生は、作家として自営業をしたり、まだ進路が決まっていないという人が含まれます。比較的就職率の高いところは、就職についてのガイダンスや相談窓口があったりと、サポートが充実している傾向にあります。 また、大学によっては大学院などへの進学率が40%を超えているところもあり、4年間学んですぐに就職というよりは、さらに深く専門性を身につける人が多い大学もあります。
美大・専門学校・短大・通信制学校。それぞれの就職メリット・デメリット
美術を学ぶ場は、美大以外にも専門学校や短大、通信制学校などがあります。それぞれのメリット・デメリットをまとめましたので、受験生や社会人の方で学校選びに迷っている方は参考にしてみてください。
4年制美大のメリット・デメリット
メリット
- クリエイティブな思考力、表現力、想像力などを多方面から学ぶため、基礎から応用までしっかりと身につく
- 厳しい入学試験をパスした人が集まるため、基本的に学生のレベルが高い
- 広告や放送・マスコミ業界、大手制作会社、大手一般企業などの大手のデザイン系就職に有利
- 美術業界は、学歴・出身大学で判断されることも多く、美大卒だと就職や職場、展示会などで有利
- 基礎的な教養、思考力が身についているため、美術以外の道にも就職しやすい
デメリット
- 学費が高い。例えば、国立である東京芸大は、入学金含め4年間で約310万円。私立の中でも最も高額な武蔵美は、4年間で入学金含め約700万円(どちらも学科によって変動あり)
- その他、受験までには美術予備校代、入学してからも画材代、教材費などがかかる 人気が高く、浪人の可能性が大きい
- 大学や専攻によっては、就職に必要なデザイン系ソフトを課題などで使用しないため、独学で学ぶ必要がある
- 就職に実践的でないがゆえに、卒業後改めて専門学校に入学する人もいる
美術系専門学校のメリット・デメリット
メリット
- 2年間で実践的な知識・技術が効率的に学べる(デザインソフトの使い方や実際の案件に近い課題など)
- 大学では学べない技術を学べるため、即戦力を必要としている企業に雇われやすい
- 競争率が高くないため、入学しやすい
デメリット
- 授業では実践技術のみを叩き込むため、人によっては思考力や画力が身につかない場合もある
- 学歴を重視する企業に入社しづらい。入社後も美大卒の人と比べて昇進しづらい場合がある
- 4年制美大に比べると学費が安い。例えば、東京デザイン専門学校2年制学科の場合、入学金含め2年間で約226万円。
美術系短大のメリット・デメリット
メリット
- 4年制美大と専門学校の間のような教育内容を2年間で学べる
- 4年制美大と比べると学費が安い(美術女子大学短期大学部の場合、2年間で入学金含め約200万円)
デメリット
- 2年間で学ぶため、カリキュラムが詰まっていて忙しい
- 入学後、早い段階で就職活動を始めなければならないため、業種や職種などの向き不向きが判断しづらい(就職活動は1年次後半〜2年次に始める人が多い)
美術系通信学校のメリット・デメリット
メリット
- 仕事などと両立しつつ、自分の隙間時間を使って美術を学ぶことができる
- 社会人にとって仕事のステップアップや転職などに役立つ
- 定時制の場合と同じく学校側から就職支援が受けられる
デメリット
- 基本的に大学へ出向くことなく課題などを進めるため、自己管理力やモチベーションが低いと留年しやすい
- 学内での人脈を作りにくい
その他
- 武蔵野美術大学、京都造形芸術大学、大阪芸術大学など有名美大に通信課程があり
- 学費は武蔵美の通信課程の場合、4年間で118万円〜。スクーリング(各キャンパスに赴いて受講する講義)を希望する場合や、教職課程を履修する場合など、ケースバイケースで受講料が加算される。
美術系学校のメリット・デメリットは以上です。それぞれの特徴を踏まえて、自分にあった学校を探してみてくださいね。
学部・学科・専攻ごとの美大就職事情!就職に有利・不利な専攻は?
続いては、美大の中でも学部や学科によって就職事情に違いがあるのか見ていきましょう。この章では、大きくデザイン系とファイン系の学部・学科についてご紹介します。
就職に強いデザイン学部・学科(グラフィック・WEB・空間・プロダクトなど)
美大の中でも就職に強いと言われるのが、デザイン系の学部・学科。主には、グラフィックデザインやWEBデザイン、空間デザイン、プロダクトデザインなどがあります。 厚生労働省による特定サービス産業実態調査によると、デザイナーと呼ばれる人たちの中でも、最も多いのがグラフィックデザインに従事する人。全体の約58%を占めます。次いでがマルチメディアデザインと呼ばれる、デジタルコンテンツやWEBなどのデザインを手がける人が約10%を占めます。それだけ事業所数や案件が多いだけに、求人サイトなどを見ても、グラフィックやWEB系の業種の求人は他のデザイン職よりも求人数が多いです。美大でそういった分野の知識や技術を身につけておけば、比較的就職しやすいと言えるでしょう。
また、デザイン系学生は、広告代理店やコンサル会社、メーカーなど幅広い企業に就職する道があります。大学で身につけた問題解決型のデザイン思考は、デザイン事務所や制作会社だけでなく、一般企業から重宝されることも多いです。万が一、美大入学後に美術やデザインとは違う分野に挑戦したいと思ったとしても、うまく軌道修正できる場合が多いですよ。
就職で活かすのが難しいファイン系学部・学科(油絵・日本画・版画・彫刻・工芸など)
2つ目は、デザイン学部とは対照的なファイン系学部。ファイン系学部とは、純粋芸術を追求する学部で、主に油絵や日本画、版画、彫刻、工芸などの専攻があります。自己表現として作品を制作する学部なので、それをそのまま就職に結びつけるというのはなかなか難しいのが現実。卒業後は、アーティストとして作品作りを続ける人が多いですが、それだけで生計を立てられる人は少なく、制作時間が確保しやすい非常勤講師や残業のない一般企業の仕事などに就くのが一般的です。美術と関係のない職種に就く人も多くいます。
最後に
美大からの就職は、思った以上に幅広い選択肢があったのではないでしょうか。クリエイティブ職だけでなく、総合職や企画職などその他職種でも美大の強みを活かせるところは多数あります。ぜひ、自分の得意分野や性格を見つめ直して、どんな業界や職種に向いているかじっくり考えてみてくださいね。
番外編:美大生で茨城県で就職活動をしている方へ
美大出身で就職活動をしている方の中には、茨城県で仕事を探しているという人もいるかと思います。茨城県にも広告代理店やデザイン事務所、建築設計事務所、家具工房、教育関係の仕事など今回ご紹介したような求人がたくさんありますよ。地元で就職したいという方はもちろん、自然豊かな田舎で作品作りをしながら働きたいという方にもぴったりな職場が見つかるはず。1章でご紹介した職種を参考に、イメージに合う求人を探してみてくださいね。